◆阿武隈の山郷

「昨日までの暴風雨で全部倒れちゃったんですよ。ちょうど種の収穫前で、少しずつ起しているところです。駄目な種もでるだろうなあ。」

「日本エゴマの会」の代表を務めている村上守行さんは、倒れたエゴマを足で器用に起しながらわれわれユノカ一行を出迎えてくれました。

ユノカ一行が福島県阿武隈地方の山郷にある「日本エゴマの会」を取材に訪れたのは昨年10月9日のこと。

暴風雨に見舞われた岩手山羊サミット直後の訪問です。


◆日本古来の油

エゴマはシソ科の植物で、縄文時代から日本各地で栽培され江戸時代までは、葉を食用にしたり、種から搾る油を食用や灯用、塗料にと広く使われてきたましたが、灯用としては菜種に、食用としては胡麻などに押されて17世紀には生産量消費とも激減してしまったといいます。


◆エゴマ油の復活譚

1997年、村上守行さんの父周平さんが、輸入食用油の安全性に疑問をもち、昔から食べられてきたエゴマ油を復活させようと「日本エゴマの会」を発足。エゴマ油を100%自給している韓国の村、松鶴村に出会い衝撃を受け、そのまま搾油機一式を購入することからエゴマ復活の歴史は始まります。

その後、お亡くなりになる2004年までの約8年間の間、ひたすら安心安全なエゴマ油の生産と普及に努め、今では、北は青森から西は山口まで全国に20以上ものエゴマの会や数々の愛好会がうまれるまでになっている。現在は、息子の守行さんや母のみよ子さんらが周平さんの遺志を受け継いで活動を続けています。

◆黒色の宝石

「エゴマは、5月下旬に植えて10月下旬に収穫するんです。だから、この間の暴風雨はタイミングが悪かったというか。収穫後、乾燥させて種が乾いたところで種をはずし洗ってから天日干しして、水分計で種の水分量が7.0以下になったものを絞るようにしてます。」




◆有機無農薬無化学肥料

「地元のエゴマ種には、黒種と白種があって黒種なら1kgから360cc、白種なら300ccくらいとれるかな。うちは周辺の10農家と契約していてここ搾油します。もちろん無農薬無化学肥料の有機栽培のものしか搾りません。」



◆黄金色の雫

搾油機は韓国産の圧搾式で、最初はゆっくりと圧力をかけ、その後一気に圧力をかけていくそうです。搾油機の口から少し白濁した黄金色の油がとろーり滴り落ち、鼻を近づけると干草のような素朴な香りがします。


◆オイルの味わい肌さざり

「舐めてみてください。美味しいでしょ。手に塗ると分ると思いますが、乾性の油なので、すぐ乾いてさらっとするでしょ。べとつかなくていいですよ。」

確かに出汁をきかせたような旨く力強い油です。

残った油を両手で擦りあわせるとすぐさらっと肌に溶け込みます。これは、エゴマ油に60%も含まれるアルファ・リノレン酸が融点が低い上に二重結合の多い脂肪酸で、肌に塗るとすぐに結合して保護膜をつくるからだという。この保護膜が乾燥やアレルゲンなどの侵入を防ぐ働きをするわけです。



◆エゴマに賭ける夢

守行さんは静かに語ります。

「日本人が一人1a作れば10kgのエゴマが収穫できます。そうすれば日本人の食用植物油の消費量原料12kg分は完全自給ができるんです。」

みよ子さんが出してくれた素朴だけど力強いエゴマ入りのパンプキンスープをすすりながら、それも夢ではないかも、とふと思った。

それは、エゴマ油にしてもスープにしても、素材の味を活かそうとする愚直さが伝わってくるとともに、守行さんら達の科学的で客観的な姿勢が感じられたからかもしれません。


ユノカの石鹸もかくありたいものだなあ。

みよ子さんの愛猫に見送られながら、そう思うユノカ一行でありました。


ユノカ・サイトへ